オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
「明香……しっかりしなさい、春樹は、お前に、一番泣いて欲しくないはずだから……」

幸之助が、静かにそう言うと、私に紺色のハンカチを差し出した。

「……ありがとう、ございます……」

私は、ハンカチを受け取ると、ぎゅっと目頭を拭って、大きく息を吐き出した。


ーーーーその時だった。


途端に、胃から込み上げてくる何かに、思わず口元を覆った。

「明香?大丈夫か?」

隣の冬馬が、すぐに心配そうに私を覗き込んだ。

「明香さん?大丈夫?」
ドクドクと鼓動が早くなっていく。

「……お手洗いに……」

私はそのまま、角を曲がってトイレに駆け込むと、胃の中のものを吐き出した。

精神的なものなのかもしれない……色々なことがありすぎて。

吐き出すと少しだけ気分が収まってきたが、まだ気持ちが悪い。貧血だろうか?少しめまいもする。

便座から立ち上がろうとして、誰かにぐっと腕を掴まれた。

「あ……」

そこには、さっと、私の脈を測りながら、心配そうに、私を見つめる、未央の姿があった。
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