オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
明香と未央が戻ってくる前に、春樹の検査が終わり、俺と幸之助は病院が、用意してくれた特別個室で、主治医の説明を受けていた。

「春樹さんは、難しい病気を抱えていらっしゃいます。この病院での治療よりも、海外に渡り、最先端の治療を受けられた方が良いと思います」

未央の兄だろう。白衣を着た、まだ若い男性医師の名札には、脳外科医『酒井公也(さかいきみや)』と書かれている。

「公也君、春樹は……治るんですよね?」

幸之助が、縋るような目で酒井に訊ねた。

「とにかくできるだけ早い手術を……としか。大変難しい手術ですので、もし成功しても、リハビリ等でしばらくは向こうで暮らしながら、通院となる筈です」 

「こちらで公也君に、執刀してもらうことはできないですか?」

「設備の兼ね合いで、……申し訳ないのですが国内では難しいです。ロスに友人で腕の良い脳外科医がいますので、ご紹介いたします。
……もう少ししたら春樹さんも目が覚めると思いますので、後ほど、また父と一緒にご説明させて頂きます」

生真面目に、俺達に一礼すると、酒井は、静かに扉を閉めて出て行った。

目の前では、点滴の管を2本つけられた春樹が、静かに眠っている。

幸之助は、大きなため息を吐き出すと、黒革の椅子に腰掛けた。俺も並んで座った。

「明香に……話すか?」

さっきの感じだと、かなり取り乱していたし、精神的なストレスからなのか、体調も悪そうだった。幸之助もそれを心配しているんだろう。

「話さないとな……多分、明香が納得しない」

「そうだな……あの子は、芯が強い……母親似だからな」

「……昨日、明香と山下さんに会ってきたんだ……」

一瞬、幸之助の目が見開かれるのが分かった。
< 167 / 201 >

この作品をシェア

pagetop