オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
「幸い、神谷頭取の融資のおかげで、プロジェクトも軌道に乗ってきているし、しばらくは従業員5000人を守りながら経営も続けられる……それが、芽衣の耳に入ったようでね、先日訪ねてきて、プロジェクトが軌道に乗れば、婚約は、もう破棄してもらって構わないと。頭取には、自分から話すからと言ってね」

「芽衣が?」

「お前には、好きな女がいる。だから自分じゃ、お前を、幸せにしてあげられないからと言ってきてね……」

ーーーーだから、婚姻届を出さなかったのか?

俺の事を好きだと言ってくれる芽衣に、寄りかかるばかりで、俺が、明香を忘れることができないから。 

『私……きっと明香さんみたいになれない』

そう言って涙をこぼした芽衣を思い出す。

俺なんかの幸せばかり願って、ビジネスの駒にされて、寂しさを埋める為だけに、俺に抱かれて、俺は、芽衣をどれほど傷つけてたんだろうか。

「芽衣が、自分が置かれている境遇のせいで、優しいお前が、無理してるのが申し訳ないと言っていた……。
お前も、好きな女と、好きな人生を歩めばいいから……」

俺は、何も言わなかった。言えなかった。

好きな女なんて、この世に一人しか居ない。

ーーーー欲しい女は、明香一人だけだ。

でも、芽衣を、こんなに俺のことを思ってくれている芽衣と、本気で別れられるだろうか。  
俺と、別れたら芽衣はどうなる?またビジネスの駒として、誰かに嫁がされるだけだ。

そもそも、こんな状況で、春樹から、明香を取り上げるなんて、俺には、到底できない。

「……んっ……」 

ベッドに横たわる、春樹の唇から、小さな声が漏れた。

「春樹?」

俺が、覗き込むのと、幸之助が立ち上がるのが同時だった。
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