オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
テーブルに、並んだお鍋も、ピザもサラダも、ほとんど無くなった頃だった。テーブルに、乗らなくなった空いたビール缶が、床に転がって、時間は、22時を回っていた。


ーーーー春樹の、スマホが鳴る。

ポケットからスマホを取り出すと、春樹の顔が少し曇った。 

幸之助(アイツ)?」
5本目の缶ビールを、飲み干した冬馬が春樹に聞いた。

「多分、仕事のお小言かな」

「ごめんね。春樹……この間も役員会……」

「明香のせいじゃないよ。仕事より、明香が大事」  

にこりと笑って
春樹は席を立つと、玄関扉を開けて出て行った。  


「そろそろお開きかな」

冬馬が、立ちあがろうとした時、芽衣さんの頭が、こつんと冬馬の肩にもたれかかった。

「芽衣?」

もう長い睫毛は、ぴたりと閉じられて、気持ちよさそうに、冬馬の肩で、眠る芽衣を見ながら、冬馬が、やっぱガキだな、と笑った。

その顔が何故だか、冬馬の心が少しずつ芽衣さんに向いていっているようで、私の中は、灰色に心が濁っていきそうだ。


冬馬は、起こさないように、芽衣を横抱きにすると、寝室の扉を開けた。

寝室には、真新しいダブルベッドが見えた。冬馬が、芽衣をベッドに下ろすと、肩まで布団を掛けるのが見えた。

冬馬は、あの部屋で、彼女を、抱いているのだろうか。

「片付けよっか」
「明香は座ってろ」

私が、立ちあがろうとする前に、冬馬が、私の目を見てそう言った。

今日、初めてかもしれない。ちゃんと、冬馬の目を見たのは。

「……身体、大事にしろよな」

「もう大丈夫だから、洗い物位、手伝うよ」

私は、立ち上がって、流しの蛇口をひねると、スポンジに泡をつけた。

冬馬は、それ以上は何も言わずに、テーブルのお皿を重ねては、流しの横に置いていく。

ついこの間までは、当たり前のようにしていた
ことさえも、冬馬が、隣に並ぶだけで、鼓動は早くなる。
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