オリオンの夜に〜禁断の恋の果ては、甘く切なく溶けていく〜
冬馬が、プレートを置いて、私がスポンジで洗っていく。

ただ、その繰り返しなのに、この時間が、いつまでも続けばいいのにと願う私は、どうかしてる。

その時、不意に、冬馬のプレートを置く手に、次のプレートを洗おうと、手を伸ばした、私の指先が触れた。

冬馬の手に触れて、思わず、手を引っ込めた時、お皿が床に落ちて、ガシャンと割れた。

「あ、ごめんなさい!」

しゃがみ込んで、割れたプレートを拾おうとした、私の肩を、冬馬が掴んだ。

「怪我したらいけないから、椅子座ってろ」

「いいっ、大丈夫。出来るから」

粉々に割れたプレートは、私の心と一緒だ。

溢れた心のカケラを、拾うように割れた破片を集めていく。

「明香」

「大丈夫だからっ」

「いいかげんにしろよ」

咎めるような声色に、視線だけ上げると、冬馬の薄茶色の瞳が、私を真っ直ぐに見ていた。

その視線に、心まで吸い込まれそうになる。慌てて視線を逸らして、私はプレートの破片に手を伸ばした。

「痛っ……」

人差し指の先に痛みがはしる。

冬馬の瞳に見つめられて、動揺した私は、破片の先が指先に当たったのを、真っ赤な血をみて理解する。

「だから……言ってんのに」

冬馬は、私の手首を掴むと、そのまま人差し指を口に含んだ。

私の指先から、流れる血液が、冬馬の体内に入って入り混じるのを感じて、あの夜、重なりあったことを思い出す。 

「……冬馬……」

冬馬は、私の人差し指に、強く吸い付くようにして止血する。

鼓動が高鳴って、身体が熱くなって、冬馬に触れたくてたまらなくなる。

手を伸ばそうとした時だった。私の指先は、冬馬の口内から、そっと戻される。

「……俺もお前のと、おんなじ味すんのかな」

冬馬は、私を見ない。でも同じことを考えていたのかもしれない。

「……おんなじでもいい……」   

そう口をついて出た言葉に、冬馬は、暫く黙ってから、私の頬に触れた。

冬馬の、切なそうな顔に涙が出そうになる。泣いちゃダメなのに。言っちゃダメなのに。冬馬を、困らせるだけだから。

「冬馬……私、」 

それでも、やっぱり冬馬が……。 



ーーーー「何、してんの……?」

聞き慣れた声に振り返る。春樹の瞳は、驚きに満ちていた。
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