13歩よりも近い距離
夜八時。夕飯と風呂を済ませた私は、スウェット姿にスマートフォンだけを持って家を出た。とぼとぼと、時間をかけて進む十三歩。
「おかしいでしょ、こんなの……」
岳の自宅前、地団駄を踏んだから、計十九歩になった。
「すずちゃんごめんねえ、岳が我儘言って」
ことの発端は岳本人なのだろうけれど、結果こうなってしまっているのは、彼を止めなかったこの母親にも原因がある。
「い、いえ……」
「あら、お風呂済ませてきてくれたの。せっかくヒノキの香りの入浴剤、買ってきたのに」
「お、お気にせず……」
「髪の毛まだ濡れてるわね。ドライヤー渡すから、岳の部屋で乾かしちゃって。あの子がお風呂入る時に戻せばいいから」
「は、はあ……」
この奇妙な世界から抜けるには、一体どうしたらいいものか。
「おかしいでしょ、こんなの……」
岳の自宅前、地団駄を踏んだから、計十九歩になった。
「すずちゃんごめんねえ、岳が我儘言って」
ことの発端は岳本人なのだろうけれど、結果こうなってしまっているのは、彼を止めなかったこの母親にも原因がある。
「い、いえ……」
「あら、お風呂済ませてきてくれたの。せっかくヒノキの香りの入浴剤、買ってきたのに」
「お、お気にせず……」
「髪の毛まだ濡れてるわね。ドライヤー渡すから、岳の部屋で乾かしちゃって。あの子がお風呂入る時に戻せばいいから」
「は、はあ……」
この奇妙な世界から抜けるには、一体どうしたらいいものか。