13歩よりも近い距離
「分かったわ。じゃあ夕ご飯食べたらもう、岳ちゃんの家へ行っちゃいなさい」
台所で湯を沸かしながらあっさりとそう言った母親には、へそで茶を沸かしそうになる。
「近いんだし、パジャマで行った方が楽ね。着替えなんか、明日の朝ちゃちゃっと帰って来てすればいいし」
私は今、男女の体型に大差のない幼き頃の夢でも見ているのだろうか。だからこんなにも彼女はさくっと、異性の家への外泊を認めるのだろうか。
ふと視線を自分の身体へ落とすと、そこには見慣れた中学の制服があった。靴下にも、しっかり校章のワンポイント。紛うことなき、これは現実だ。
「ちょ、ちょっとお母さん!それ本気で言ってるの!?」
突として出した大声に、彼女は「きゃ」と小鳥のように鳴く。
「が、岳だよ!?中二になった岳の部屋で、中三の娘が五日間も泊まるって言ってるんだよ!?い、いいの!?」
「だって岳ちゃんがそうしたいって言っているんでしょう?そうしてあげればいいじゃない」
「はあ!?」
「昔からずうっと仲良くさせてもらってるんだから、岳ちゃんの願いなら、叶えてやりなさい」
異次元だ、別世界だ。私の思う常識が、ここでは非常識になってしまう。
「で、でもそれで万が一──」
「もし万が一のことがあった時は、すぐに知らせなさいね」
ほら、こんなことを堂々と茶を注ぎながら言ってくる。やっぱり私は、理の全く異なる異空間へとワープしてしまったのだ。
台所で湯を沸かしながらあっさりとそう言った母親には、へそで茶を沸かしそうになる。
「近いんだし、パジャマで行った方が楽ね。着替えなんか、明日の朝ちゃちゃっと帰って来てすればいいし」
私は今、男女の体型に大差のない幼き頃の夢でも見ているのだろうか。だからこんなにも彼女はさくっと、異性の家への外泊を認めるのだろうか。
ふと視線を自分の身体へ落とすと、そこには見慣れた中学の制服があった。靴下にも、しっかり校章のワンポイント。紛うことなき、これは現実だ。
「ちょ、ちょっとお母さん!それ本気で言ってるの!?」
突として出した大声に、彼女は「きゃ」と小鳥のように鳴く。
「が、岳だよ!?中二になった岳の部屋で、中三の娘が五日間も泊まるって言ってるんだよ!?い、いいの!?」
「だって岳ちゃんがそうしたいって言っているんでしょう?そうしてあげればいいじゃない」
「はあ!?」
「昔からずうっと仲良くさせてもらってるんだから、岳ちゃんの願いなら、叶えてやりなさい」
異次元だ、別世界だ。私の思う常識が、ここでは非常識になってしまう。
「で、でもそれで万が一──」
「もし万が一のことがあった時は、すぐに知らせなさいね」
ほら、こんなことを堂々と茶を注ぎながら言ってくる。やっぱり私は、理の全く異なる異空間へとワープしてしまったのだ。