あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
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 羽理(うり)との公園ランチを終えて帰社した屋久蓑(やくみの)大葉(たいよう)は、午後から作業着に着替えて社用車の軽トラに乗り込むと、車で一時間半ばかりの距離にある取引先農家へ、地元の夏祭りに開催予定のイベントの打ち合わせに(おもむ)いた。

 土恵(つちけい)商事は、青果専門に(あきな)う商社だが、別に出来上がった農作物を全国各地へ流通させるのだけが業務内容の全てではない。
 それこそ作る所から農作物のあれこれに(たずさ)わることも少なくないし、提携先の農家も全国各地に散らばっているため、大葉(たいよう)たちが働く本社以外にも支店が各地域に点在している。

 そんな感じなので、扱う農作物の種類も多岐(たき)に渡っているのだけれど。

 大葉(たいよう)の取りまとめる部署――総務部は、開発部農作物開発課のように直接畑に出てどうこうということは余りない。
 だが、イベントの企画などの音頭(おんど)は総務部企画課の担当だから、現地へ赴くことが全くないわけではなかった。

 今回みたいにイベントの話し合いのため農家を(おとな)えば、部長とか平社員とか関係なく……それこそ何となくの流れで農作業を手伝いながら話をする、なんてことも少なくない。

 特に沢山の夏野菜が収穫期を迎えるこの時期は、どこも人手が足りていないから作業を手伝いながらの話し合いというのはざらだ。


 そんな身体を使いまくった出張の帰り道、折悪しく事故渋滞にはまって思いのほか帰りが遅くなってしまった大葉(たいよう)だ。

(くそ! 何で畑ってやつは町中にねぇんだよ!)

 ……だなんて、そりゃぁ土地を広く取れるのが田舎だからですよ!?とすぐさま農家様から冷ややかな目で見られそうなことを思いつつ。
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