あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
 外でお弁当だなんて嫌がられるかな?と心配していた羽理(うり)だったけれど、岳斗(がくと)に「こういうランチも悪くない」と言ってもらえてホッとして。

「はい、今日は風もそよそよ吹いていて気持ちいいですし、絶好のお外ランチ日和(びより)です♪」

 春先に、岳斗がここでたんぽぽの綿毛を吹き飛ばしていたのを見て、なんて可愛い人なのっ♥と(もだ)えたのをふと思い出した羽理は、一人口の()にフフッと笑みを浮かべた。

「もう少ししたら梅雨入(つゆい)りして、こんな風に外で過ごすこと自体難しくなっちゃうんだろうね」

 ほわんと言われて、「はい」とうなずきながら足元をふと見れば、まだ綿毛を付けたたんぽぽがあちらこちらにポツポツと点在している。

「ん? 何か楽しいことでも思い出したの?」

「あ、いえ……たんぽぽの綿毛が可愛いなぁと思って」

(本当はそれを吹き飛ばしていた課長が可愛かったんですけどねっ♪)

 もっと言うと、社に戻って来た時、髪の毛に綿毛がくっ付いたままの課長の様子が最高に愛らしく見えて、帰宅するなり勢いに任せて一気に一本短編が書けてしまったくらいだったのだが。

 さすがにそれをバラすわけにはいかないので、羽理は曖昧(あいまい)に言葉を(にご)して誤魔化した。

「あー、たんぽぽの綿毛ってさ、見てると何だか童心にかえって吹き飛ばしてみたくならない? 僕さ、大人気ないなって思いながらこっそり吹き飛ばしてみることあるんだ」

 荒木(あらき)さんだけに言うね、とウインクされて、羽理は心の中で(ええ、存じ上げておりますとも!)とこぶしを振り上げた。


「ね、ところで荒木さんの弁当(それ)、手作り?」

「あ、はいっ」

 岳斗(がくと)のひざの上に載っている弁当は、会社近くの仕出し屋の幕の内だ。
 かさの部分にアスタリスク型の飾り切りが入った大きなシイタケと、花形にくりぬかれたニンジンが目にも楽しいお煮しめ。それから皮の焼き目が絶妙なサバの塩焼きが美味しそうな一品。
 卵焼きも鮮やかな黄色が目に(まぶ)しくて、ほうれん草のバターソテーの緑色とのコントラストが何とも食欲をそそられる。
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