あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
荒木(あらき)さん、前の日にも早退しちゃってたしね)

 結果的に法忍(ほうにん)さんに物凄い負担を強いてしまった気がして、少し(ねぎら)おうと声を掛けたら「じゃあ夕飯をおごって欲しいです」と言われた。
 法忍仁子(じんこ)のことだ。てっきりどこか外食へ連れて行って欲しいと言うのかと思いきや、疲れているから家でのんびり食べたいと言われて、フレンチのテイクアウトをねだられた。

 法忍さんにそれを買ってあげて現地解散してから一人帰社してみれば、終業から一時間も経っていないというのに屋久蓑(やくみの)大葉(たいよう)は退社した後だった。

 いつもならそれで諦めるところだが、二日連続で見舞いに来ましたなんて言って荒木さんのアパートを訪問したら、大葉(たいよう)さんがどんな反応をするかな? とかちょっとしたイタズラ心が芽生えてしまった。

 岳斗(がくと)は先日みたく荒木羽理(うり)の家まで出向いて、二人の間にほんのちょっぴり水を差してやろうと思ったのだけれど――。一応荒木さんには訪問する旨を連絡しておこうと電話をかけてみたら、電源が切れているんだろうか? そんなアナウンスが流れるばかりで一向に繋がらない。

(まさかまた大葉(たいよう)さんと揉めた?)

 ふと嫌な予感がした岳斗だったけれど、上司だからか、そんな疑問をぶつけるために大葉(たいよう)へ電話するのは何となく気が引けて。とりあえず荒木さん()へ行ってみようと思った。


***


 そんなこんなで愛車に乗ったまま、一度は荒木(あらき)羽理(うり)のアパート前まで来てみた岳斗(がくと)だったけれど、過日思いのほか長々と路上駐車をしてしまったことを思い出した。

(あれはよくなかったよね)

 そう思って、今日は荒木さんのアパート近くのコインパーキングへ車を停めて散歩がてら、歩くことにした。
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