あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
「立てる?」
「あ、あの……」
しかも泣いていたのか、愛らしいアーモンドアイを縁取るまつ毛が涙に濡れているから。岳斗は思い切り庇護欲を掻き立てられた。
「ああ、ごめんね。いきなり知らない男に声掛けられたりしたら怖いよね。――えっと……僕はこういう者だよ」
とりあえずそれがどのくらい役に立つかは分からないけれど、身元を明かす意味も込めていつも持ち歩いている名刺を差し出したら、目の前の女の子は条件反射で受け取ってしまったそれに視線を落とすなり、
「あ、あのっ、……ごめんなさい! 私、今、お名刺を持っていないんです……」
と申し訳なさそうに眉根を寄せる。
「ああ、そんなこと」
別に仕事として名刺を差し出したわけじゃない。
泣き濡れた目をしているというのに、どこかクソ真面目でズレた言動をした目の前の女の子への好感度が、さらにグンと上昇したのを感じた岳斗だ。
「仕事じゃないから問題ないよ?」
クスッと笑いながら言って、再度「立てる?」と手を差し伸べたら
「あの、倍相さん、私、手が汚れてるので」
その子は戸惑った顔をしてそんなことを言ってくる。
「気にしないで?」
言いながら「ごめんね」と一応謝って、戸惑いに揺れる女の子の手を取ってから、岳斗は「名前、聞かせてもらっても良い?」と小首を傾げてみせた。
「あ、あのっ、杏子。美住杏子です」
岳斗の顔に興味を持つわけでもなく、ただただ他者に泣き顔を見られるのがしんどいみたいに彼女――杏子が視線を逸らすのが、岳斗にはますます好ましく思えたのだ。
「美住杏子さん。とりあえずこんな寂しいところに一人でいちゃダメだ。家の《《近く》》まで送るよ」
神社の敷地内に植えられた木々がこんもりとした杜の様相を呈していて、ちょっと離れたところにあるコンビニの明かりや街灯の光源を遮っている。
それもあって他所より薄暗く見えて、岳斗は杏子を気遣いながら、彼女を怖がらせないであろうギリギリのラインを提示した。
***
「あ、あの……」
しかも泣いていたのか、愛らしいアーモンドアイを縁取るまつ毛が涙に濡れているから。岳斗は思い切り庇護欲を掻き立てられた。
「ああ、ごめんね。いきなり知らない男に声掛けられたりしたら怖いよね。――えっと……僕はこういう者だよ」
とりあえずそれがどのくらい役に立つかは分からないけれど、身元を明かす意味も込めていつも持ち歩いている名刺を差し出したら、目の前の女の子は条件反射で受け取ってしまったそれに視線を落とすなり、
「あ、あのっ、……ごめんなさい! 私、今、お名刺を持っていないんです……」
と申し訳なさそうに眉根を寄せる。
「ああ、そんなこと」
別に仕事として名刺を差し出したわけじゃない。
泣き濡れた目をしているというのに、どこかクソ真面目でズレた言動をした目の前の女の子への好感度が、さらにグンと上昇したのを感じた岳斗だ。
「仕事じゃないから問題ないよ?」
クスッと笑いながら言って、再度「立てる?」と手を差し伸べたら
「あの、倍相さん、私、手が汚れてるので」
その子は戸惑った顔をしてそんなことを言ってくる。
「気にしないで?」
言いながら「ごめんね」と一応謝って、戸惑いに揺れる女の子の手を取ってから、岳斗は「名前、聞かせてもらっても良い?」と小首を傾げてみせた。
「あ、あのっ、杏子。美住杏子です」
岳斗の顔に興味を持つわけでもなく、ただただ他者に泣き顔を見られるのがしんどいみたいに彼女――杏子が視線を逸らすのが、岳斗にはますます好ましく思えたのだ。
「美住杏子さん。とりあえずこんな寂しいところに一人でいちゃダメだ。家の《《近く》》まで送るよ」
神社の敷地内に植えられた木々がこんもりとした杜の様相を呈していて、ちょっと離れたところにあるコンビニの明かりや街灯の光源を遮っている。
それもあって他所より薄暗く見えて、岳斗は杏子を気遣いながら、彼女を怖がらせないであろうギリギリのラインを提示した。
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