あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
いきなり目の前へ現れた男性に、無様にひざまずいたままでいた所を優しく抱き起こされた杏子は、呆然としたままその人――倍相岳斗さんというらしい――の指示に従いながら、ふと自分が泣きべそをかいていたことを思い出した。
暗くてよく見えないけれど、恐らく彼は自分と同年代くらいだろう。
家《《まで》》ではなく、家の《《近く》》まで送ると言われたところに、倍相さんの誠実さを垣間見た気がして、そんな人にこんなみっともない顔をさらしているのは同情を引く行為のようで恥ずかしいと思ってしまった。
「あ、あの……、うち、すぐそこのアパートなので一人で大丈夫です」
倍相さんに顔を見られないよううつむきがちになったまま十階建ての女性向けアパートを指さしたら「わ、奇遇だね。僕もそこに用があったんだ」と言われて驚かされる。
自分が住んでいることでも分かるように、あのアパートには単身女性しか住んでいない。そこに用があるということは、きっと恋人に会いに行くんだろう。
もしかしたらお母様か、ご姉妹が一人で住んでいらっしゃるのかも知れないけれど、何となく直感的にその可能性は低いだろうなと思って。
さっき、たいくんに横恋慕しそうになって、コテンパンに打ちのめされたばかりだ。愚痴をこぼした途端、三毛猫ちゃんにも呆れられてしまったし、他人様の恋路を邪魔するなんてことはしてはいけない。
暗くてよく見えないけれど、恐らく彼は自分と同年代くらいだろう。
家《《まで》》ではなく、家の《《近く》》まで送ると言われたところに、倍相さんの誠実さを垣間見た気がして、そんな人にこんなみっともない顔をさらしているのは同情を引く行為のようで恥ずかしいと思ってしまった。
「あ、あの……、うち、すぐそこのアパートなので一人で大丈夫です」
倍相さんに顔を見られないよううつむきがちになったまま十階建ての女性向けアパートを指さしたら「わ、奇遇だね。僕もそこに用があったんだ」と言われて驚かされる。
自分が住んでいることでも分かるように、あのアパートには単身女性しか住んでいない。そこに用があるということは、きっと恋人に会いに行くんだろう。
もしかしたらお母様か、ご姉妹が一人で住んでいらっしゃるのかも知れないけれど、何となく直感的にその可能性は低いだろうなと思って。
さっき、たいくんに横恋慕しそうになって、コテンパンに打ちのめされたばかりだ。愚痴をこぼした途端、三毛猫ちゃんにも呆れられてしまったし、他人様の恋路を邪魔するなんてことはしてはいけない。