あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
 自分を理解してくれる同志のような存在に加えて、羽理(うり)では満たせなかった、家族になり得る相手に恵まれたなら、もっともっとマシな人間になっていけるような気がして――。

(この子ならあるいは……)

 岳斗(がくと)は、求められた質問への回答を一生懸命してくれている杏子(あんず)を、熱のこもった視線で見詰めた。

「実は土井さんから私、たいくん……えっと……その甥っ子さんの好みのタイプだって言われて。もしそれが本当なら、何で私、会ってもらえもせずにお見合いを断られちゃったのかな? って納得いかなかったんです。それで……お恥ずかしい話なんですけど、さっきお見合い相手の彼に説明を求めに行って……彼女さんとのラブラブぶりを見せつけられて、撃沈したばかりで……」

 ぎゅっと胸の辺りを掻きむしるみたいに掴んで「彼に突撃するまでたいくんに彼女がいるの、知らなかったんです……」と表情を曇らせた杏子を見て、岳斗の心はざわついた。

「杏子ちゃんは、……そのお見合い相手のことが好きだったんだね」

 胸の奥にチクリとした痛みを感じながらも岳斗がそう問いかけたら、
「へへっ。バカですよね」
 どこか自虐的に微笑んだ杏子が、「あれ?」とつぶやいてポロリと涙をこぼした。

 それを見た岳斗は、思わず彼女をギュッと抱きしめずにはいられなくて。

 ――振り向いてもらえない不毛な恋は、捨ててしまいなよ?

 自分も杏子と同じ経験をしたばかりだから分かる。

 そう簡単に捨て去れる気持ちじゃないけれど、新しい恋を始めることが、何よりの特効薬になるはずだ。
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