あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
 杏子(あんず)の口振りからすると、彼女のことを憎からず思っていたらしい恵介伯父が、その感情のおもむくまま。杏子に言わなくてもいいことを言ってしまったのは明白だったし、そのことが杏子を余計に傷付ける要因になってしまったのだから。


 羽理(うり)の罪悪感に引っ張られるように、大葉(たいよう)がそんな風に思ってしまったのを見透かしたみたいに、柚子(ゆず)があからさまに吐息を落とした。

「たいちゃん。お姉ちゃん、貴方が何を考えているのか大体想像がつくんだけど……誰かを選ぶってことは誰かを切るってことなの。どちらを選ぶか決めたなら、選ばなかった方へは中途半端な同情をしちゃダメ」

「柚子……」

「あっちにもこっちにもいい顔をするっていうのはね、たいちゃんの心は安らぐかも知れないけど巻き込まれた方は振り回されて、たまったものじゃないの」

 誰にでも優しい人間は、実際のところ誰にも優しくないのだと示唆(しさ)された大葉(たいよう)は、小さく吐息を落とした。

 柚子の言う通り。下手に杏子に心を砕いて、羽理を不安にさせたのでは本末転倒だ。

「肝に銘じとく」

 大葉(たいよう)は姉のアドバイスを素直に受け取ることにした。


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