あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
 昨夜、自分がほんの少し席を外している間に何かがあったらしく、倍相(ばいしょう)課長が大葉(たいよう)の呼び方を〝屋久蓑(やくみの)部長〟から〝大葉(たいよう)さん〟に改めていて、やたらと大葉(たいよう)に懐いている様子だった。
 それがどことなく恋情に見えて、羽理(うり)はソワソワしたのだ。

 でも大葉(たいよう)の方は『何をバカなことを』と羽理の懸念(けねん)一蹴(いっしゅう)していたし、そんな風に大葉(たいよう)がなびかないならば、例え羽理の予想が当たっていたとしても倍相(ばいしょう)課長の片想いにしかならない。

 現に夕べ、大葉(たいよう)は羽理のことを宝物みたいに大切に大切に扱ってくれたし、それこそ足腰立たなくなるくらい夢中になって愛してく……ゴニョゴニョ……。

(なのにっ! 何でまたちょっと私が目を離してる隙に、大葉(たいよう)の方からも歩み寄っていますかねっ!?)
 そう思ってしまった。

 だが、つい今し方大葉(たいよう)に見せてもらった倍相(ばいしょう)課長からのメッセージは、新たな恋を見つけたみたいな文面だったのを思い出して――。

(大丈夫だよね?)

 コロコロと(せわ)しなく移り変わる思考回路の波の中で、羽理は一生懸命自分に何の問題もないはずだと言い聞かせたのだけれど、どうしても不安が拭えなかった。

 それで結局、超絶ストレートに大葉(たいよう)へ疑問を投げ掛けてみたわけだ。

「あー、実は今日な、会社で倍相(ばいしょう)岳斗(がくと)の抱えてきたモン、色々聞かせてもらったんだ。俺のことを信用して(はら)割ってくれたアイツに、俺もちゃんと応えてやりたいって思ったんだよ。――呼び名の変更は、……まぁその(あかし)だ」

 理由を聞いたら、何だか余計にモヤモヤしてしまった羽理である。

「それは……ひょっとして倍相課長に愛情が芽生えたってことです、か?」

 大葉(たいよう)の太ももへ触れた手指にギュッと力を込めて握りしめたら、「はぁっ!? 何でそうなる!」と()頓狂(とんきょう)な声を上げられて、羽理はビクッと身体を跳ねさせた。

「んなわけねぇだろ! 俺も岳斗も恋愛対象は女性だぞ? ……ほら、その……まぁ、アレだ。詳しいことは俺の口からは勝手にゃ言えねぇけど、……断じてそんなんじゃねぇから! そこだけは信じろ」

 そんな風に言われて、ハンドルを握ったままの大葉(たいよう)から、空いていた左手で彼の太もも上の握りこぶしをそっと包み込まれた羽理は、それでも不安をぬぐい切れなくて身体をギュッと固くする。
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