あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
 だからこそ、大葉(たいよう)はこのメッセージを見た瞬間、わけが分からなくて「はっ!?」と口走ってしまったのだ。
 でももしかしたら年齢が同年代だし同級生だったりしたんだろうか? とも思って。

「とりあえず考えてても答えなんて出ねぇし、マンションに着いたら電話してみるよ」

 小さく吐息を落としながらそう告げた大葉(たいよう)に、羽理(うり)が恐る恐ると言った様子で「あの……」とつぶやいた。前方を見詰めたまま「ん?」と先を(うなが)したら「《《どちら》》に?」と不安そうな声が返る。

 一瞬『どういう意味だ?』と思った大葉(たいよう)だったのだけれど、すぐにピンときた。

倍相(ばいしょう)岳斗(がくと)の方に決まってるだろ」

「本当に?」

「ああ、本当だ。――正直(ぶっちゃけ)杏子(あんず)の方は電話番号すら知らん」

 大葉(たいよう)の言葉に羽理が明らかにホッとした様子で肩の力を抜く。その様が、心底愛しく思えた大葉(たいよう)である。

 実際、杏子の携帯番号なんて大葉(たいよう)は知らないし、もしかしたら渡されていた資料――釣書――には書いてあったのかもしれないけれど、中を確認していないのだからそれすら不明だ。

 恵介伯父に聞けば、杏子の連絡先なんてすぐに分かるだろうが、そこまでする義理はない。

「変なメッセージをしてきたのは《《岳斗》》の方だろ? だからそっちに聞くよ」

 何気なくそう付け加えたら、「あの……、大葉(たいよう)」と羽理がそっと大葉(たいよう)の太ももに触れてくるから。その小さな手指の感触に大葉(たいよう)はドキドキと胸を跳ねさせた。だが、それと同時――。

「いつの間に倍相(ばいしょう)課長と、下の名で呼び合うような仲良しさんになられたんですか?」

 羽理から、至極ごもっともな質問が投げ掛けられた。


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