あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
 電話口、申し訳なさそうに岳斗(がくと)から『お二人をサポートするとか言っておきながら……ホントすみません』と謝られた大葉(たいよう)は、「気にするな」と答えつつ。羽理(うり)に電話が通じないと思うや否や、すぐに家まで来てしまう岳斗の行動力には、感服するばかりだった。

(岳斗が本気で羽理にぶつかってたら、俺、到底敵わなかったんじゃねぇか?)

 そう思うと、居間猫(いまねこ)神社の猫神様〝様様〟だと思ってしまった。

 実際のところ、杏子(あんず)との出会いというハプニングに見舞われず、岳斗が無事羽理の部屋にたどり着けていたところで、自分たちはそこにはいなかったわけだが、それはまぁ結果論だ。

『そうだ。さっきもちらっと言いましたけど……法忍(ほうにん)さんも僕も結構限界なので……これ以上荒木(あらき)さんがお休みになるようなこと、しないでくださいね?』

 ついでのように岳斗から言われた言葉を思い出して、吐息を落とした大葉(たいよう)である。

 車の中でウリちゃんからも非難がましい目で見られたのを気にしていたところへ、岳斗からも同じような注意をされた大葉(たいよう)は、心の中で『《《無理させる気は》》ねぇよ』と言い訳をせずにはいられない。

 今夜は羽理が疲れないよう、明日の仕事に響くような痛みにも見舞われることがないよう、優しく気遣いながら触れるつもりなのだから。

 そんなことを思いながら羽理を見詰めたら、彼女のすぐそばでじぃーっと自分を見上げているキュウリの視線に気が付いた。

 ――お()しゃ、羽理ちゃに(しゃわ)らないという選択肢はないんでしゅか?

 そんな幻聴が聞えてきて一瞬(ひる)みそうになった大葉(たいよう)だったけれど、『その選択肢はないんでちゅよ、ウリちゃん』と声には出さず即答した。


***
< 416 / 539 >

この作品をシェア

pagetop