あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
「なぁ羽理(うり)

 とりあえず考えを整理して呼び掛ければ、羽理がどこか(うかが)うような眼差しを自分に向けてくる。
 それがちょっぴり気になってしまった大葉(たいよう)だったが、あえて気付かないふりをした。

「――このまま、ここで俺と一緒に暮らさないか?」

 岳斗(がくと)に言われたから、というのももちろんある。だけどそれはきっかけに過ぎない。羽理に結婚を申し込んだのはそれよりも前のことだし、大葉(たいよう)だって大好きな羽理とひとつ屋根の下で暮らすことを夢見ていなかったわけじゃない。

「えっ? あのっ。大葉(たいよう)……?」
 
 驚いたように「いきなり、どうしたの……?」と続けながらちょん、と大葉(たいよう)の腕に触れてきた羽理の小さな手指は、冷たい飲み物が入ったグラスに添えられていたからだろうか。ひんやりとして、少ししっとりしていた。

「いきなり……だったか?」

 ちょっと動揺が声ににじみ出てしまって、それを誤魔化すようにコホンッとわざとらしく咳ばらいをしたら、羽理がコクッとうなずいた。

 そうしてじぃっと大葉(たいよう)の顔を覗き込むようにして言うのだ。
大葉(たいよう)、私に何か隠してない?」
 と。

 余りにド直球な質問に、大葉(たいよう)がグッと言葉に詰まるのを見て、羽理の瞳に確信めいた光が宿る。

「さっきの電話、倍相(ばいしょう)課長に何を言われたんですか? 私にも、ちゃんと全部話して?」

 羽理の言葉に呼応するように、彼女のすぐ横にいるキュウリが「アン!」とちょっぴり甲高い声で鳴いた。


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