あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
 羽理(うり)の反応は気になったが、まぁ〝なつのトマト〟については時間のある時にインターネットで検索してみればいいかと思った大葉(たいよう)は、「それはさておき――」と話を切り替えた。

 そのことにホッとしたように「はいっ」と声を弾ませた羽理を見て、(なつのトマト恐るべし!)などと斜め上のことを思いながら、大葉(たいよう)は「家、せっかく探すならお前の意見も聞きたいんだ」と、当初話したかった話題へと軌道修正する。

「ほら。ここみたいに賃貸(ちんたい)も悪くねぇとは思うんだけど……いっそのこと一軒家を買うのも手だなって思ってる。イヤか……?」

「へっ?」

 実家ほどだだっ広い土地は必要ないが、庭付き一軒家だと家庭菜園が出来て嬉しい……などと密かに思っている大葉(たいよう)である。

「そ、れは……さすがに贅沢、じゃないでしょうか?」

「ん? 贅沢? んなこたねぇだろ。実際――」

 ソワソワオロオロと自分を見詰めてくる羽理が愛しくて、大葉(たいよう)は腕の中のキュウリを一旦足元へ下ろすと、羽理の頬へそっと触れた。

 下から愛娘のキュウリが大きな瞳でじっと自分たちを見上げているのを感じながら、大葉(たいよう)は羽理の頬からあごへ向けてツツッと指先を滑らせる。

「俺、家一軒程度なら現金一括で難なく買えるくらいの資金力はあるつもりだぞ?」

 趣味は土いじりと料理。
 せいぜい肥料や野菜の苗、それから育った作物の支柱や(うね)を覆うビニールトンネルなど……そんなものや食材くらいにしか金を使ってこなかった大葉(たいよう)は、同年代の男たちに比べてかなり潤沢(多め)に貯金をしている方だ。
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