あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
(ウリちゃんだってそんなに金食い虫じゃねぇしな)

 通院などになれば人間みたいに健康保険が利かない分、実費で全額負担になってしまうが、キュウリを家に迎え入れた頃から大事を取ってペット用の医療保険には加入している。

 幸いキュウリはまだ年若くてこれといった持病もないから、今のところ年に一度の狂犬病予防接種と、ジステンパー・パルボ・犬アデノウィルスなどを予防する混合ワクチン。それからフィラリア・ノミ・ダニの予防がひとつで出来るオールインワンタイプの予防薬を春から秋にかけての数ケ月間処方してもらっているくらいで、保険適用外での通院ばかりだ。

『お()しゃ。あと……あたち、月に一回トリミング(びよーいん)にも連れて行ってもらってまちゅよ?』

 愛らしいリボンが両耳についているウリちゃんにキュルン♪とした目で見詰められて、大葉(たいよう)は(可愛いな、ウリちゃん!)とハートを鷲掴(わしづか)まれながら『それも問題ないでちゅよ』と心の中で返答する。


「でも……」

「なぁ、羽理(うり)。子供が出来たとき、庭で思いっきり駆け回らしてやりてぇなとか思ってるの、俺だけか?」

 キュウリちゃんと一緒に《《羽理似のクッソ可愛い娘》》がキャッキャいいながら自分が作った家庭菜園の周りを駆け回る姿を想像して思わず口元を(ほころ)ばせた大葉(たいよう)に、「こ、ども?」と羽理が瞳を見開いた。

「あの……大葉(たいよう)は……私との間に赤ちゃんが出来てもイヤじゃ……ない? 迷惑だって思ったりしない?」

 ややして心配そうに眉根を寄せた羽理からそう問い掛けられた大葉(たいよう)は、息を呑んだ。

 きっと羽理はずっと……自分が出来たことで父親からは(うと)まれ、母親には苦労を掛けてきたと、心の中にわだかまりを持ってきたんだろう。

「忘れたのか? 俺はお前と家族になりたいんだ。そんな俺が、お前との間に子供が出来たとき、喜ぶ以外の選択肢なんてないと思わねぇか?」

 羽理の母親と祖母に、同棲はもちろん結婚の承諾だって取ったのだ。
 大葉(たいよう)の中で、今から始まる羽理との同棲生活は、すなわち結婚生活への序章と変わらない。それを羽理にも分かって欲しいと思った。


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