あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
 電話した時は会議室にいると言っていた杏子(あんず)に、「個室に一人は危ないかも知れないから」と言って「人がいるところにいて?」とお願いしたのだが、真面目な彼女のことだ。ちゃんと言いつけは守っているだろう。

(さて、どこにいるかな?)

 スーツの内ポケットに仕舞っていたスマートフォンを取り出しながら(もう一度杏子ちゃんに電話をかけてみる?)と思った岳斗だけれど、彼女の性格を考えると経理課の自席(せき)に戻っていそうな気がして、(電話は極力控えた方が無難かな?)と考え直す。

 杏子が今、職場でどんな扱いをされているのか岳斗には分からない。そんな状況で私的な電話を受けさせるのは、攻撃される隙を与えかねないではないか。

(とりあえず杏子ちゃんが送ってきた音声データに入ってた〝ササオ〟ってヤツが何者かを探るのが最優先事項かな)

 中村経理課長(サイテー上司)が杏子に不埒(ふらち)なことをしようとしたとき、『先日の《《ササオくんとの件でみんなとギクシャクしてる》》みたいだけど』とか何とか言って、彼女を気遣う素振りを見せていた。あの口振りからすると、杏子はササオのせいで、社内で孤立しているのではないだろうか。だとすれば、そこを調べないわけにはいかない。

 そう思っていた岳斗(がくと)だったのだけれど――。



「ホント笹尾(ささお)さん、災難でしたねぇー」

 どうやらどこかにいるらしい〝神様〟は、岳斗の味方らしい。
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