あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
「ぼ、ボスだなんて……、わ、私はただ……美住(みすみ)さんから大事な彼氏が酷い目に遭わされた当事者ってだけで……べ、別にそんな大それたものじゃ……」

 ちょっと笑い掛けただけでこれ。さっきまでの勢いはどこへやら。頬を染めながら岳斗(がくと)を見つめてくるその女の態度は、呆れてしまうくらい精彩(せいさい)を欠いていた。

「ふーん。《《大事な彼氏》》が、ねぇ……」

 岳斗が意味深に〝大事な彼氏〟のところを強調したら、「な、何よ、貴方! 安井さんと笹尾さんを侮辱するつもり!?」と、配下の一人が果敢(かかん)にも岳斗へ盾突いてくる。

(《《こっちの》》は杏子(あんず)ちゃんに足を掛けたヤツじゃないな。名前は知らないけど)

 杏子をわざと転ばせようとしたのはもう一人の方だが、岳斗にとってはどちらでも変わりはない。正直同じ人間として捉えるのも虫唾(むしず)が走るし、そんな三人の名前なんてどうでもいい。だが、主犯格の〝ヤスイ〟とやらのフルネームを明確にしておくことだけは、今からすることに必要だった。

「そっか、キミがヤスイさんか。ひょっとして下の名はアヤナ?」

 岳斗が白々しくそう告げると、安井が瞳を見開いた。

「どうして私の名前を知っていますの?」

 本人は動揺を隠しているつもりだろうが、黒目が所在なく揺らめいている。

「あー、それはね――」
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