あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
杏子(あんず)ちゃんは何も悪いことなんてしてないんだから、堂々としていればいい」

 岳斗(がくと)は安井たちに掛ける声とは全然違う、柔らかな口調で杏子に語りかけてくると、「僕に任せて?」と杏子を抱く腕にほんのちょっと力を込めてきた。そうして杏子の足を気遣いながらそっと床へ降ろしてくれると、「悪いけどちょっとだけここに立っていてくれる?」と小首を(かし)げてみせた。その上で念押しするように「いーい? 絶対に僕の後ろから出ちゃ駄目だよ?」とウインクをするのだ。

 杏子は岳斗に降ろして欲しいと望んでいたけれど、いざそうされるとちょっぴり心許(こころもと)なくて、同時に岳斗に甘えるようなことを思ってしまった自分がイヤになった。

 杏子を手放してフリーになった岳斗は、まるで気持ちを切り替えるみたいにふぅっと息を吐き出すと、杏子を(かば)うように安井らとの間に立ちはだかる。

 その上で、彼の背中を見詰めるしか出来ない杏子が、思わず身をすくませてしまうくらい冷え冷えとした声音で安井に問い掛けるのだ。

「さて、三人の中のボスはキミだという認識で合ってる?」


***


 岳斗(がくと)は偉そうにワンワンまくし立ててきたクールビューティー《《風》》の女性にターゲットを定めると、あえてニコッと微笑みかけた。
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