あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
 営業課長の雨衣(あまい) 一悟(いちご)に異議申し立てをしてみたけれど、懇乃介(こんのすけ)の他にも困った面子(めんつ)がいるとかで、聞き届けてもらえなかったらしい。

「えっ?」

(他の部署の人たちは問題社員が混ざっていようと何だろうと、基本的に個人個人が持ってきているのに……。営業課だけ何で特別扱い?)

 確かによその部署に比べたら接待などの絡みで経費の計上が多いけれど、それにしたって。

「戻ったら私からも倍相(ばいしょう)課長に確認してみるね。チョコ、有難う。けど……差し入れとかホント気にしなくていいから。代わりに仕事、バリバリ頑張って私たちのボーナスに反映させて? あー、あと! 髪の毛、もっと黒っぽい方が五代(ごだい)くんには似合うと思うし、服装もピシッとしてる方が好感度上がると思うぞ?」

 まくし立てるように一気に言って(きびす)を返した羽理(うり)に、「す、すぐ美容院行きます!」と言う声が投げかけられて。

 クスッと笑いながら可愛いワンコを振り返ったら、ワイシャツのボタンを留めてネクタイをキチッと整えている懇乃介(こんのすけ)が目に入った。

(ホント、基本的には素直でいい子なんだけど)

 手のかかるワンコのような後輩は可愛いけれど、他部署なのだし、もう自分《《たち》》のことは気に掛けてくれなくてもいいのにな?と、手の中のチョロルチョコ《《二つ》》を見ながら思った羽理だった。
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