あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
***


 ジリリリリリー!と言う、まるで目覚まし時計のようなこの音は、土恵(つちけい)商事では昼休憩ですよ、の合図だ。

「ねぇ羽理(うり)! 倍相(ばいしょう)課長が今日のお昼一緒にどう?って誘ってくれたんだけど……もちろん行くよね?」

 ベルが鳴ると同時、羽理はパーン!とエンターキーを叩いてデータを保存したと(おぼ)しき法忍(ほうにん)仁子(じんこ)から、そう声を掛けられた。

 会社ではキリリと()ました、〝出来るオフィスレディ〟を気取っている羽理だけれど、家では基本ぐぅたら。
 女子力なんてどこかに置き忘れて久しいので、入社して以来手作り弁当なんて作ってきたことがない。
 ランチは大抵コンビニ弁当か、会社に出入りしている仕出し屋の弁当か、はたまた近場の飲食店へ仁子と一緒に食べに行ったりしている。

 長い付き合いでそれを知っている仁子が、いつもの調子で「せっかくだし一緒に食べに行こうよ」と誘ってくれたのだけれど。

「ごめん、仁子! 実は私、今日はお弁当持ってきてて……」

「嘘でしょ!」

「嘘じゃないよぅ」

「もぉ! どこで買ったヤツよ? 消費期限、夜までとかじゃないの!? 確認してみなさいよ!」

 買ってきた品だと決めつけている仁子の様子に、羽理は何となく意地になってしまう。

「残念ながら《《出来合い品》》じゃないから! そう言うの、分かんないし多分そんなには持たないと思う!」

 言って、どこか得意げに若松菱(わかまつびし)模様の風呂敷に包まれた弁当を鞄から取り出したのだけれど。

「やけに渋い包みね!?」

 朝、羽理自身が華麗にスルーした部分を、仁子が的確に拾い上げてきたから。
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