フラグを全力で育てる系女子の恋愛事情〜なぜか溺愛されてますが〜
ーー俺は、小夏を家族とは思えない

その言葉の意味を聞いても、私は絶対に答えられない。

「…小夏」

颯君の手が、私に伸びる。思わずビクッと反応すると、彼はあからさまに傷ついた顔をした。

なんだか物凄く悪いことしてるような気分になる…っ

「俺のこと、気持ち悪い?」

「まさか!そんなことないよ!」

「好きだって、言っても?」

颯君は雨の中に捨てられた子犬みたいに、潤んだ瞳で顔をしかめた。

「それは嬉しいことだし、気持ち悪いなんて思わない。でも、私は応えられない」

「…俺が、家族だから?」

「好きな人がいるから」

親の再婚で出来た姉なんて、嫌に決まってる。でも颯君は、お父さんのことも私のことも認めてくれた。

口下手で、意外と懐こくて、可愛い。

私は颯君のこと、これからも家族として好きだし、それ以外には見られない。

「だから、ごめんなさい」

キッパリ口にすると、颯君は俯く。

「…分かってたことだけど、すげえしんどい」

「颯君…」

「けど、ありがと。ちゃんと考えてくれて」

小さな声だったけど、颯君はそう言って少しだけ顔を上げた。

「ごめん。忘れるまで、まだちょっと時間かかりそう」

「…うん」

「ちゃんと、家族に戻るから」

無理やり作った笑顔が切なくて、だけど私にはどうしようもなくて。

「これからも、バスケ応援してるね」

「…サンキュ」

颯君は私に背を向けて、片手を上げた。
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