愛を秘める
第一章

第一話 転生

ー秋晴れー

ペンキで隙間なく塗り潰したような、

青い空が学校の屋上を覆っていた。

『キーンコーンカーンコーン…』

昼休みの終わりを告げる、

無機質なチャイムが鳴り響く。

『カチャン…カチャンッ…カチャン』

黙々と淡々とフェンスをよじ登る。

下から見たらパンツが丸見えとか。

屋上のフェンスに上ったら危ないとか。

この境界線の外側に飛び下りたら、

どうせ、みんな忘れてしまう。

「お、小学生が下校してる…いーな。」

登り切ったフェンスに腰を掛けて、

味のしなくなったガムを膨らませる。

『ギィィィッ』

背後で錆び付いたドアの音が耳に響いた。

「うぉっ、びっくりした…美麗か。」

「そろそろ授業が始まるぞ、真雄。」

聞き慣れた低くて春の日向みたいな声。

振り返るとやはり、幼馴染が立っていた。

「んー、天気イイからサボるわ~。
ほら、教室戻るの勿体無いじゃん?」

境界線の内側に飛び降りて、

彼に向かってへラッと嗤って見せた。

「丁度良いな。次、体育だぞ。」

「あれ…そうだっけ?じゃあ、
美麗が替え玉として授業出てよ。」

「いや、クラス一緒だろ。」
< 1 / 4 >

この作品をシェア

pagetop