原田くんの赤信号
「それで俺はっ」

 だけど、一生懸命わたしに話してくれた。

「俺は……もう一回戻りたいと思った。もう一回、もう一回瑠美の死ぬ前に戻れたら絶対瑠美を助ける、絶対死なせないって固く誓った。そしたら奇跡が起きたんだ」

 わたしの命を救おうと、誓ってくれた原田くん。

「どうしてだか、また過去に戻れたんだよ。それも今度はもっと前に、瑠美が死ぬ一ヶ月も前の一月六日にっ」

 だけどそれは、これまで語ってくれた物語全ては、作り話と真実のどちらなのだろう。

「瑠美をどうやって福井から遠ざけようかとすんげえ考えた。福井の悪いとこ瑠美に言ったり、福井には他に好きな人がいるって噂流したり。でもさ、お前それでも好きなんだもん、福井のこと。俺が瑠美助けたくて必死で足掻いてんのに、瑠美は行こうとするんだ。二月十四日、必ず福井の家に。だからせめて、時間だけでもずらせればと思って夕方に仕向けた。福井のことは俺が朝から連れ出して、昼飯も一緒に食べて。これであの交通事故にはあわないだろうって思った」

 原田くんの話にはリアリティーがあるけれど、だからと言って、本当の話だとはかぎらない。

「でも、瑠美はひかれるんだ」

 そう、こんな話。嘘かもしれない。

「時間が違くても遠回り道をさせても、春だろうが夏だろうが、俺がどの季節からやり直したって、何度だって死んだんだよ」
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