原田くんの赤信号
 福井家をふたつ発見してしまった日に、美希ちゃんともたれかかったあの壁。わたしはそこへひとり、再び背を預けていた。
 そしてまた、ズズズと落ちていく。

 文房具セット。その単語は、ついさっき耳にしたばかりだ。原田くんのひどい作り話の中、わたしのお通夜。そこに福井くんがバレンタインデーのお返しだと言って、持ってきてくれる。

「う、嘘……」

 ねえ福井くん、文房具セットをわたしにくれるのは現実のあなたではなくて、お話の中のあなたじゃなかったの?

 青よりも、緑好きの福井くん。
 文房具セットをくれようとする福井くん。

 繋がってしまった点と点に、わたしの体は強張った。
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