犬猿☆ラブコンフリクト
結局授業も二海と同じ班になり、野蛮人だのゴリラだの言われ続けてしまった。



他の授業だってそうだ。



隣の人とペアを作って作業しろって感じで・・・二海に散々罵詈雑言を言われて応戦するを繰り返した。



「・・・最悪だぁ・・・」



授業が終わりお昼休みになった途端、私は由紀にその事を愚痴っていた。



「・・・私、二海くんと中学同じだけどそんなこと言われた事もされた事もないよ?」



由紀に今まであったことを伝えると、由紀にはそんなことをされたことがないと言われてしまった。



やっぱりマドンナにはそんなことしないのか。




「・・・ず・・・い・・・」



考え事をしてると、由紀がボソッと何かを呟く。



だけど、何を言ったのかは分からなかった。



「?どうしたの?」



「!・・・お弁当、早く食べないと時間なくなるよっていったの」



「わ、ホントだ・・・!」



由紀の言葉に、確かに・・・と思い、バックの中からお弁当を取り出そうとするけど・・・。



どこを探しても見当たらない。



「・・・やば、お弁当忘れてきたかも・・・」



朝、用意してもらったお弁当をもって玄関に行ったのまでは覚えている。



だけど、その後お弁当をバックの中に入れた記憶も、持った記憶もない。



多分・・・玄関に置いてきた。



「本当?・・・じゃあ、購買で買お。私も飲み物欲しいから一緒に行くよ」



「ありがと〜、助かる」



由紀の言葉で、お弁当を探す手を財布へと伸ばす。



財布を持つのと同時に由紀が立ち上がり、私もつられるようにして立ち上がった。



2人で並ぶようにして購買へと歩き出すと、もう既に購買へ向かっていた人達が戻ってくるところだった。



半透明な袋から見えるのは、私のお気に入りであるピザトースト。



購買でも人気上位に入るパンで、行く時間帯によっては売り切れることもあるものだった。



「買いに行くの出遅れたからピザトースト売ってないかもな〜・・・!」



「茉弘、購買で買う時いつもそれだもんね。購買で買うこと確定してたら、授業終わってすぐに購買に駆け込むし」



それを見て思わず口に出すと、由紀はクスクスと笑う。



「だって、そうでもしないと売り切れちゃうもん」



「だとしても、ピザトーストのためにあんな怖い顔で走る人なかなかいないよ?例えるなら・・・宿敵である魔王の元へ向かう勇者、みたいな?」



由紀の話では、宿敵の元へ向かう勇者並みに怖い顔をしてるらしい。



そんな心当たり一切ないんだけどな。



そんなことを考えているうちに、廊下の突き当たりまでたどりつき、階段の所へ差しかかる。



その間も他愛もない話をしながら、階段をおり始めようとした時──



「辻本さん、危ない・・・!」



この声・・・同じクラスの山崎くん?



後ろから知っている声で呼ばれ、振り返えろうとする。



だけど、その前に後ろからドンッと背中を突き飛ばされた。



「え──」




階段から足が外れ、宙へ投げ出される体・・・動きの全てがスローモーションで見えた。



驚いた表情を浮かべている由紀と、私の背中を押したであろう腕──。



そして・・・昨日、私につかみかかっていたクラスメイトの男子。


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