犬猿☆ラブコンフリクト
その後、由紀に連れられて保健室に向かったけど、私にも二海にも怪我はなかった。
だけど、念の為少し休もうとのことで休んでいる。
保健室の先生いわく、山崎くんがいじめっ子がしでかした悪行を全て動画に収めていたらしい。
私のことを押す瞬間も例に漏れずに撮っていたみたい。
元々停学処分を食らったりしていたから、今回の件が決定打になって退学処分になったんだとか。
「あらら〜・・・完全にやってんな〜、コイツ。・・・大変な目にあったなぁ、お前ら」
保健の真琴先生が、山崎くんの動画のコピーを自分のスマホで再生しながら声をかけてくる。
少しだけ珍しい男の保健医だ。
しかも、数少ない女子を全員虜にしてるとまで言わせる人でもある。
「しかも突き飛ばしたの辻本かよ。おいおい、仮にも女子を突き飛ばすとか正気か?」
「正気じゃねーから突き飛ばしたんだろ、あの豚は。俺が下にいなかったらどーしてくれてんだ」
ふん、と鼻を鳴らしながら腹立たしそうに口を紡ぐ二海。
「相変わらず口悪ぃな、二海」
「正直者なだけでーす」
スマホから視線を外して二海を呆れたように見つめる真琴先生に、あっけらんとした様子で答えた二海。
真琴先生は何か言いたげだったけど、その言葉を飲み込む。
「ま、それはそれでいいけどな。・・・それより辻本、どっか痛くねぇか?あとから出てくること多いからよ」
ガシガシと頭をかいたあと、二海に向けていた視線を私に向けながら問いかける。
体をパッと見ながら痛いところがないか確認するけど、特に見当たらなかった。
「・・・落ちた時は痛かったところもありましたけど、今は痛くないです」
「そうか」
私の返事を聞いて、ホッとしたような表情を浮かべながら柔らかく微笑む真琴先生。
いつもの様子からは想像できないほど、甘い笑い方・・・数少ない女子を虜にしてるってだけあるな。
「休んでて痛いところ出てきたらオレに言えよ。・・・二海もな」
「はい」
「へーい」
先生の言葉に返事をしたあと、私と二海を遮るカーテンが掛けられた。