先生、優しくしないで

「えっ、ウィリアム先生に！？」

ドクドクと音を立て、有紗の胸が締め付けられるような感覚が走る。ウィリアムは女子生徒から人気で、ファンクラブまで存在しているほどだ。だが、先生と生徒という関係で告白をするなど、相当な勇気が必要である。だが、ソフィアの告白が断られたことに対し、有紗はどこかホッとしていた。

「……先生は、どうしてソフィアを振ったの？学校一の美少女だよ？」

ソフィアの失恋を喜んでいる自分を嫌悪しつつ、有紗は訊ねる。ローズは大きく息を吐くと、「子どもだから」と答える。

「先生から見たら、ソフィアも私たちも子どもなんだよ。歳の差が十四もあるし。先生は言ってたよ。「こんなおじさんじゃなくて、もっといい人がいるよ」って」

「そっか……」

ホッとしたものの、有紗の胸が痛みを発する。それは、ウィリアムが歳下の自分に振り向いてくれることはないと理解してしまったからである。

少し俯きがちになる有紗を見て、ローズは大きく目を見開く。そして、有紗の手はローズに強く掴まれた。