先生、優しくしないで
「有紗、ウィリアム先生のことが好きなの?」

ローズに見つめられ、有紗の顔が赤く染まる。慌てて否定したものの、「そんな顔で否定されても、誰も信じないわよ」とため息混じりに返された。

「そんな傷付くことが確定している恋なんて、さっさと捨てた方が身のためなんじゃないの?あのソフィアが振られたんだもの。わかるでしょ?」

ローズの言葉に有紗は何も言えなくなり、口を閉ざす。強く握り締めた拳が微かに震え始めた。

「歳の差恋愛なんて、同い年のカップルみたいには過ごせないんだよ?歳の差はどうやっても縮めることはできないし、ウィリアム先生の方が早く歳を取る。ウィリアム先生を看取る覚悟はあるの?」

「看取る……」

どんな人にも死は平等に訪れる。どんなに仲睦まじい夫婦だったとしても、別れの時は来る。だが、そのような遠い未来のことなど想像すらしたことがなく、ドクドクと心臓が跳ねる。

「それにウィリアム先生、あんなにかっこいいんだから、私たちに内緒で付き合ってる人がいてもおかしくないでしょ?私、有紗に恋で傷付いてほしくない。……その気持ちは捨てるべきよ」
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