先生、優しくしないで
いっそ、嫌いになれたらどれだけ楽だろう。だが、ウィリアムを見かけるたびに感じるのは胸の高鳴りであり、その度に好きになってしまう。

「有紗!」

ローズが苛立ったような声を出す。だが、それでも有紗は体を動かすことができない。

「有紗?」

ずっと固まっている有紗を見て、ウィリアムが楽しそうな顔から心配そうな顔になり、声をかけてくる。有紗と目が合うようにウィリアムはしゃがむ。刹那、有紗の頭にウィリアムの大きな手が触れた。ウィリアムの周りにいる女子生徒に睨まれ、ローズが心配そうにする中、ウィリアムが口を開く。

「ダイジョブ?」

ウィリアムの口から英語ではなく、片言の日本語が飛び出る。それにローズたちは驚いていた。

有紗がウィリアムと少しずつ話すようになってから、彼は「こんにちは」や「ありがとう」など簡単な日本語を覚えてくれた。有紗はとてもそれが嬉しかったのだが、今はただ苦しいと感じている。また、胸が恋を訴え始めたからだ。
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