先生、優しくしないで

涙が溢れるのをグッと堪え、有紗は無理矢理口角を上げる。そして、ウィリアムの手を頭から退かした。どこか逞ましい腕の熱が頭に残る。

「ウィリアム先生、心配してくださってありがとうございます。私は大丈夫です。ローズ、ごめんね。行こう？」

震える足に動けと必死に命じ、有紗は歩いていく。背中に感じるウィリアムの視線など、知らないふりをしていた。

（いつか、この痛みは消えるのかな……？）

目を閉じた刹那、有紗の頰を涙が伝った。



それから一週間、有紗は前よりもウィリアムを避けるように心がけていた。授業中もなるべく彼と目が合わないようにし、視界の端にウィリアムが映るだけで逃げるようになった。

ウィリアムから逃げるたび、有紗の胸はまるでナイフで刺されたかのような痛みを発する。涙で視界がぼやける。そのたびに有紗は乱暴に涙を拭い、別のことを考えるようにしていた。

そんなある日、有紗は職員室に呼ばれた。そして、担任の先生から以前提出したクラスメート全員分のノートを渡される。