先生、優しくしないで
何故か申し訳なさを感じながら、有紗は言う。少しずつ頭は俯いてしまった有紗だったが、ウィリアムから返ってきたのは優しい言葉だった。

「そうだよね、なかなか慣れないよね。そんな中で頑張っている有紗はすごいよ」

思いがけない言葉に有紗は驚き、顔を上げる。微笑んでいるウィリアムを見て、どこか色褪せて見えていた目の前の景色が色付いていくのがわかった。目の前がぼやけて、形となって溢れていく。

「有紗はすごいよ」

そう言いながら有紗の頬を伝う涙をウィリアムがハンカチで触れた時、有紗は自分が恋に落ちたことを知った。



資料を図書室の長テーブルに置き、有紗は課題を進めていく。時おり、ウィリアムに頭を撫でられたことを思い出し、胸がキュンと音を立ててしまうもの、自分が思っている以上に課題は進んでいた。

「有紗!ここにいたのね」

声をかけられ、有紗は顔を上げる。そこには友達のローズがいた。ブロンドの髪をツインテールにし、メガネをかけている。
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