21トリソミー
 箸で母の玉子焼きを挟み、口に運ぶ。

「……やっぱり美味しいなぁ」

 母の料理には魔力があると思う。こんなに気落ちしていても、やっぱり食べられてしまうから。

 こんなに美味しい料理を作ってくれるお母さんに甘えたかった。でも、お母さんも出産に反対している。

 誰にも甘えられない。苦しくて苦しくて仕方がない。

 お弁当に零れ落ちそうになった涙を、

「しょっぱくなっちゃう」

 右手で慌ててキャッチした。

 泣かないように、口の中に入るだけおかずを詰め込み、ほっぺたを最大限まで膨らませながら咀嚼。

 私は不器用だから、物事を二つ同時には出来ない。

 泣けば箸は止まる。食べていれば、涙が止まる。だから、食べる。

 泣いたら化粧のやり直しだ。
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