フラれた後輩くんに、結婚してから再会しました
「ねえ、上月くん……。やっぱりわたし……」
下着姿になったわたしは、寄せて上げる効果抜群のブラから覗く、くっきりとした谷間(絶対に、本来はこんなにない)を隠すように両手で覆う。
その手を柔らかく外されてしまい、妙にすうすうとした感じに頬が熱くなる。もう一度、彼に声をかけた。
「オーナー。あの……っ!」
「恥ずかしがらなくていいですよ。彼女に任せておけば」
わたしは目の前の人物をおろおろと見上げる。
髪をぴっちりと結い上げ、清楚なメイクの女性は掴んでいたわたしの腕をそっと離した。
「上月様のおっしゃる通りです。お客様にぴったりのお召し物をご用意いたしますから、安心してお任せくださいませ」
彼女はにこやかに笑う。そして、広い試着室からすっと出ていくと店の棚から数着のワンピースを取り出して品定めを始めた。
「……ぅ。で、でも、本当に、こんなの、申し訳なくて、こんな、高級な、お店……」
囁くように、この部屋、試着室の向こうにいるであろう上月くんに声をかける。だが、返事はない。聞こえないふりをしているのだろうか。
(ほんと、どうしよう。こんな高そうなブティック来たことないのに)
上月くんにウソがばれ、演奏会へ参加することになったわたしは、否応なく彼にホテルの場所を告げさせられ、チェックアウトと同時に彼はわたしを迎えに来たのだ。