フラれた後輩くんに、結婚してから再会しました

「なにもないよ。……っ。こんなときに、かけてこないで……っっ」

なんという八つ当たりだろう。

笑って、なんにもないよわたしはしあわせだよって、言いたいのに、普通にしたいのに。

嗚咽が止まらない。わたしは電話に向かって子供のように泣きじゃくった。
彼は、じっと黙っている。
まるで、無機質な機械の向こうでわたしを抱きしめていてくれるみたいだった。でも、決してそれは現実にはならない。なってはいけないのだ。

『今どこにいるの』

泣き声の嵐が少しおさまったとき、彼はそう尋ねた。

「……」
『自宅じゃないよね。今から行くから、場所、教えてください』
「だめ。来ないで」
「そばに、いたいんだ」

その言葉を期待したのは、十年以上も前だ。
なのにいまも、胸がぐるぐると熱く、苦しい。

「な、んで、いま、それ、言うの……?どして……?」

あのとき、応えてくれなかったのに、どうして。

「ごめん……。でも、あのとき、俺……」
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