フラれた後輩くんに、結婚してから再会しました
電話の向こう、彼はなにか言いかけて、言い澱んだ。
「いや、ただの言い訳になるから、やめときます。とにかく、今は一刻も早く、貴女のそばにいきたい」
「……だめ。おねがい、来ないで……」
ぎゅっと拳をにぎって、胸にあてる。飛び出しそうな思いを身体の中に押さえつけるようにして、答えた。
「大丈夫だから……。ちょっと落ち込んでるだけ。一晩寝たらすっきりするよ。それに、いま自宅だから、ね」
真新しい、四角四面のかっちりとしたホテルの室内を見渡しながら、わたしは外に広がる夜景を見渡し心を落ち着けた。窓ガラスに自分が反射する。高校生じゃない、三十五歳の、わたし。
「先輩……」
上月くんは、嘘を見抜いているだろうか。鋭い人だし、きっとバレているだろう。でも、それなら、わたしがなんで嘘をつくのかもわかってくれるはずだ。
「おねがい……上月くん」