フラれた後輩くんに、結婚してから再会しました


わたしは、縋るような気持ちで、彼に呼びかけた。
沈黙が、互いの携帯にぽかりとした空洞を作る。しばらくして彼はようやく「わかりました」
と短く答えた。

電話を切ったあと、わたしは長い間外を眺めていた。空には星が瞬いているのだろうが、地上のビル明かりが強いせいで、薄ぼんやりとした光がちらちらしているだけだ。
この、無数の街明かりのどこかに彼がいる。わたしを心配して、駆けつけようとしてくれている。
それだけで、十分だ。

はらはらと、静かな涙が溢れた。
何もかもが壊れそうだ。わたしは、周りがみんな結婚していくから、焦っていた。だから、闇雲に腕を伸ばして、互いに、相容れない人と手を取り合った。
だからいま、そのツケを払っているのだ。

そうやって、バチが当たって落ちていくわたしは、また、掴んではいけないものを掴みそうになっている。

こわくてこわくてしかたなかった。

その夜、ブラスバンド部のみんなで、楽しく演奏する夢を見た。
わたしのフルートはとても調子が良く、透き通る音が流れている。彼のサックスは黄金に光り輝き、なめらかなメロディを奏でる。楽しげな演奏は風にのって、学校の裏山にいつまでも響いていた。
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