フラれた後輩くんに、結婚してから再会しました
✳︎
眠りを妨げたのは、メッセージアプリの通知音だった。
びくんと起き上がり、ここがどこか自覚する前に電話を探す。通常の音ならこんな風にならないのだけど、この音は特別だ。『Blue』スタッフのグループからの通知なのだ。シフトの変更や、メニューのお知らせ、誰かが交代の申請をするなど、仕事上のことをすべて知らせてくる。気づいたときにチェックするのが大事だった。
今回のメッセージは店長の黒田さんからだ。
『本日、急ですが恒例の新バンドのお試し演奏会を行います! ご都合つく方は、十六時に店に集合。雰囲気大事にしたいので、オシャレしてきてくれると助かります!』
楽しそうに歌うウサギスタンプと共にそんなメッセージが送られていた。
(お試し演奏会……?)
首を傾げて画面を見つめていると、『いきまーす!』
『久しぶりでとっても楽しみ』などの返事がぽこぽこと浮かんていく。どうやら、みな、この発表は嬉しいサプライズのようだった。
今日明日とシフトは入っていない。だから、参加しようと思ったら直接お店に行くことになる。
(っていうか……。それはとりあえず置いといて……)
わたしはスプリングの効いたベッドマットに起き上がり、ぼんやりと部屋の中を見回した。
やっぱりここは、昨日気持ちが昂るままに飛び込んだ街のビジネスホテルだ。時計は九時過ぎ、日は昇り、薄い光がカーテンから漏れている。
(とうとう、一晩過ごしてしまった……)