【短編】純恋
純恋
★純恋

髪を結い、リビングのテレビの画面を見る。

何気なくテレビの時計を見ると、7:50…

あっ、また遅刻!

あたしはランドセルをつかみ、慌てて家を飛び出す。

あたし、平塚友梨。小学6年生。

部活したりとか、それなりに青春してる。

小学生のくせに青春なんて言うなって?

そんな事言わないで。来年、いやあと5ヶ月で中学生なのに。

年上や大人ってみんな、小学生と中学生を差別する。

お姉ちゃん、真梨は中1。あたしが2月生まれでお姉ちゃんが6月生まれだから年子じゃな
いけど、だからってあんな差別はないんじゃないのって思う。

お母さんはいつもあたしを子供扱いする。今朝だってもう小6なんだから布団ぐらい自分
で畳めるのに、いちいち畳みに部屋にやってきた。

お姉ちゃんは「あんたは大切にされてていいよね」なんていうけど、これって大切にされてるっていうの?

過保護なのよ。まったく、もうちょっとほっといてほしいんだけど。

…って、さっきから愚痴ばっかり言ってる。そしてそんな愚痴をこぼしている間に、学校
についてしまった。

あわてて教室にかけこむと、8時5分。

教室が1階で助かった…。

ほっと胸をなでおろしていると、後ろから誰かにランドセルを押された。

「おい!おせぇよ!っていつもの事だから仕方ねぇな!はっ」

こいつ…また!

「タケ!あたしにかまってくんなって言ってるでしょ?あっち行ってよ、シッシッ」

小柳タケ。小1から何故かずっと同じクラス。

それが関係してるのかどうか分からないけれど、昔からいつもあたしにちょっかいを出し
てくる。

昔は笑ってたけど、今はもうウザくてたまらない。

あたしはランドセルを片付けると、友達の輪にさっさと入った。

「おはよう~友梨!またタケにお出迎えされたぁ?」

「お出迎えじゃないし!あれはあたしを困らせようとしてやってんだよ!」

「ねぇねぇ、それよりさぁ昨日のドラマ見たぁ?」

美希が話をズラしてくれた。幼稚園からの幼なじみである美希は、あたしの事をよく知っている。

あたしがこういう大人数の前でタケの話をされるのが嫌いなこと。

そして…

あたしはタケが好きだって事も。


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