【短編】純恋
「おい、平塚!聞いてるのか!これを求める公式はなんだと2回聞いてるぞ!」

現実に引き戻された。

速さ?時間?…あ、違った。

「はい。道のり÷時間です。」

「……正解、座りなさい。これからはシカトしないように!」

小さなため息をしながら座る。

シカトじゃないんですけど…

「では小柳!道のりを求める公式は?」

タケ…分かるの?公式とかいうのはこいつ苦手なはず。

助けてあげたいけど…先生にバレないかなぁ。

タケの席はあたしの斜め前。

白い紙はある。

あたしは公式を紙に書く。

先生がちょっと目をグラウンドにそらした。

…チャンス!

紙をさっとタケの机に置く。

「で、分かったか、小柳?公式ぐらいは覚えてもらわねばなぁ?」

先生の口調がキツくなる。

タケは紙に気づいたようだ。

答えを言う。

すぐにタケの方から紙が送られてきた。

あたしが書いた公式の下にこんな事が書いてあった。

【助かった! ありがと。】

鼓動が高まる。

こんな事言われたの…初めて。

こういう小さな事で喜べるなんて、やっぱり恋しちゃってるんだ。



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