旅先恋愛~一夜の秘め事~
「考える時間が欲しいと言ったら……聞き入れてくれる?」


念のため尋ねると、彼が眉根を寄せ、首を横に振った。


「俺はずっと待った。これ以上待つのは無理だ」


「ずっとって……あのメッセージを送ってから半日も経っていないのに……」


「そういう意味じゃない」


渋面を浮かべた彼をじっと見つめ返す。


「でも突然結婚だなんて、暁さんのご両親やご親族が反対されるわ。私も両親になにも話せていないし」


「入籍したら両家の親にきちんと報告すればいい。そもそも唯花は妊娠しているんだ。俺の両親は喜びこそすれ、反対する理由がない」


……ダメだ、一切譲歩してくれそうにない。


「唯花、俺と結婚しよう」


とどめ、とばかりの型通りの求婚に心が大きく揺れる。

大好きな人との結婚もプロポーズもとても嬉しい。

こんな状況でなければ、本当に私を大切に想ってくれているのだと自惚れただろう。


でも現実は違う。

彼は責任を取ろうとしているだけだ。


「唯花、返事を」


焦れたように、彼が厳しい目で私を射抜く。

およそプロポーズの返事待ちとは思えない険しい表情に、なぜか気持ちが沈む。

それでもこの人を好きな気持ちを捨てれないし、彼の一番になりたいと願ってしまう。

産まれてくる赤ちゃんもきっとパパに会いたがるだろう。


「……よろしくお願いします」


小さく、でもはっきりと告げた私の返答に、暁さんは安心したように頬を緩めた。
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