旅先恋愛~一夜の秘め事~
「じゃあせめてタクシーを呼ぶから、到着するまでここにいて」


「わかったわ。ありがとう」


麗の厚意に甘えて、引き続き室内で待たせてもらう。

しばらくして、エントランスから呼び出し音が鳴った。

応対する麗の体で画面は見えなかったが、タクシーが到着したのだろう。


「お迎えがきたわ」


「本当にごめんね。じゃあ私、行くね」


ゆっくりと腰を上げ、バッグを手に取る。


「気にしないで。唯花には私の結婚に向けてお世話になるから」


「もちろん、全力で応援するわ」


フフとお互いに顔を合わせて声を漏らし、玄関で靴を履く。


「唯花の幸せを心から祈ってるから。なにがあっても私は唯花の味方よ」


ギュッと私を抱きしめてくれたハトコの温かさに、鼻の奥がツンとした。

ありがとう、と掠れる声で返答し抱きしめ返したとき、玄関の呼び出し音が鳴り響いた。


「ちょうどいいタイミングね」


「麗?」


タクシーの運転手は部屋まで迎えに来ないだろうし、いったい誰だろう?


訝しみながら、ハトコが玄関ドアを開けるのをじっと見つめる。

ガチャリと玄関ドアが開いた瞬間、長身の男性に抱きしめられた。


「唯花……!」


長い腕と硬い胸の感触、ふわりと香る肌になじんだ香水と汗の匂いに、会いたかった人が目の前にいると気づく。
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