旅先恋愛~一夜の秘め事~
案内されたのは大きな紺色の暖簾と立派な庭木が目を引く、日本家屋の料亭だった。

彼の姿を目にした和装の女将にすぐさま個室の座敷に案内された。

大きめの座卓を挟み、向かい合って座る。

苦手なもの、食べたいものなどを聞かれ、答えると彼が料理を注文する。

ほどなくして運ばれてきたコース料理には、季節の野菜がふんだんに使われていた。

優しい味つけが身に染みる。


「口にあったか?」


コースも終盤に差しかかったとき、彼がゆったりした口調で尋ねた。


「はい、とてもおいしかったです。連れてきてくださってありがとうございます」


「京都では食事に行けなかったからな。今度また行こう」


さり気ない次の約束に、心音が大きく響く。


「これからもずっと一緒に過ごしたい」


座卓の上に置いていた私の左手を自身の口元に近づけ、指先にキスを落とす。

柔らかな感触に、胸がきゅうっと締めつけられた。


「もう、逃げるな」


甘い命令に心が大きく揺れ動く。


「……私は暁さんと一緒にいていいのか、いれるのか、自信がないです」


「出会って日が浅いからか?」


「それもありますが、先ほどお話ししたとおり、立場の違いも気になります。私はただの一般社員です。今はよくても、今後すれ違ったり戸惑うかもしれません」
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