旅先恋愛~一夜の秘め事~
彼が握る私の指先が震える。
頑なで後ろ向きな私に不快な気分になるかもしれない。
でも私たちは知らない出来事が多すぎる。
お互いへの気持ちがその筆頭だ。
子どもの頃は無邪気に口にできていた本音は、年齢を重ねるごとに心の奥に隠してしまうようになった。
傷つくつらさや悲しみを知り、自衛本能が働くせいだろうか。
「立場は関係ないと言っただろ。俺に慣れてくれればそれでいい」
私の心の葛藤を事も無げに言い切られ、悩んでいる自分が情けなくなる。
一抹の不安を抱きつつも、うなずくと彼は白い歯を見せた。
食事を終え、座敷を出た途端、暁さんが私と指を絡めてくる。
「俺に慣れる練習だ」
耳元近くで囁き、手早く支払いを済ませる。
慌てて支払おうとするが、自分が誘ったのだからと一切受けつけてくれなかった。
女将に見送られ車へと足を向けたとき、彼の名を呼ぶ女性の声が聞こえた。
「椿森副社長、お久しぶりです。お会いできて嬉しいですわ。こちらでお食事を?」
足を止め、視線を動かすと私と同い年くらいの女性とその母親らしき人が立っていた。
「古越様、ご無沙汰しております。ええ、今から帰るところです」
暁さんが冷静な口調で年配の女性に返答する。
頑なで後ろ向きな私に不快な気分になるかもしれない。
でも私たちは知らない出来事が多すぎる。
お互いへの気持ちがその筆頭だ。
子どもの頃は無邪気に口にできていた本音は、年齢を重ねるごとに心の奥に隠してしまうようになった。
傷つくつらさや悲しみを知り、自衛本能が働くせいだろうか。
「立場は関係ないと言っただろ。俺に慣れてくれればそれでいい」
私の心の葛藤を事も無げに言い切られ、悩んでいる自分が情けなくなる。
一抹の不安を抱きつつも、うなずくと彼は白い歯を見せた。
食事を終え、座敷を出た途端、暁さんが私と指を絡めてくる。
「俺に慣れる練習だ」
耳元近くで囁き、手早く支払いを済ませる。
慌てて支払おうとするが、自分が誘ったのだからと一切受けつけてくれなかった。
女将に見送られ車へと足を向けたとき、彼の名を呼ぶ女性の声が聞こえた。
「椿森副社長、お久しぶりです。お会いできて嬉しいですわ。こちらでお食事を?」
足を止め、視線を動かすと私と同い年くらいの女性とその母親らしき人が立っていた。
「古越様、ご無沙汰しております。ええ、今から帰るところです」
暁さんが冷静な口調で年配の女性に返答する。