旅先恋愛~一夜の秘め事~
――これ以上一緒にいたら引き返せなくなる。


わかっているのに、思考が鈍る。

指先を甘噛みされ、体がカッと熱をもつ。


「……可愛いな。このまま抱き潰したい」


物騒な台詞に息を呑み、緩く口を開けた途端、嚙みつくような口づけが落とされた。

息継ぎさえ許されないような激しいキスに頭の中がぼうっとする。

足元がふらつく私を暁さんがサッと横抱きにする。


「……抱くぞ」


妖艶な眼差しで宣言した彼は、そのままの体勢でリビングを抜け、廊下を歩く。

幾つかの扉が立ち並ぶ中、ひとつの扉を開ける。

室内の中心に置かれたキングサイズのベッドに私をそっと降ろし、再び唇を塞ぐ。

身に着けていたスーツのジャケットを手早く脱がされ、ブラウスのボタンを外される。

同時に首筋や鎖骨に唇が寄せられ、彼の艶やかな髪が肌をくすぐる。

小さな刺激にさえ腰が浮きそうになり、熱い息が漏れる。

あっという間に露わにされた上半身を、綺麗な二重の目で見つめられる。

照明を暗くした部屋の中でもわかる、強く熱い視線に羞恥がこみ上げる。

隠そうとすると、数秒早く動いた彼が胸元に唇で触れる。

大きな手によって形を変える胸とチクリとした痛みに、声が漏れる。


「……消えてるな」


「え……?」


整わない息を吐く私に、ほんの少し拗ねたような視線を向けられた。


「俺のつけた痕」


骨ばった指が、今しがたつけられた所有印に触れる。

僅かな動きにさえ反応すると、彼がフッと口角を上げる。
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