旅先恋愛~一夜の秘め事~
なぜか慌てたような様子で、暁さんがそっと私を横抱きに抱き上げた。

突然の浮遊感に驚くと彼がしっかりした足取りで歩道へと向かう。


「暁さん、待って、どこに行くの?」


「俺の家だ。しっかり掴まっていろよ」


すぐ近くのコインパーキングまでそのままの体勢で運ばれ、助手席に乗せられた。

シートベルトひとつにもずいぶん気遣われ、慌ててしまう。

助手席のドアを閉め、運転席に向かいながら彼はどこかへ電話をかけていた。

その後、運転席に腰を下ろし、車を発進させた。


「なんで暁さんの家に向かうの?」


「妊娠しているうえに体調も悪いお前を、ひとりにするはずがないだろ」


道中尋ねると、当然のように返答された。

マンションに到着し、車を駐車場に停めた彼は再び抱えようとするので、大丈夫だと必死で訴えた。

最上階の自宅に着いた途端、リビングの大きな革張りのソファに座るよう促された。


「つらいなら寝室で横になるか?」


心配そうに顔を覗き込まれ、頬が熱をもつ。


「ありがとう。もう平気だから」


「ダメだ。寝室が嫌ならここで少し横になっていろ」


そう言って、慌ただしく家の中を歩き回り、薄手のブランケットを持って来てくれた。

私の体にかけ、頬を撫でる優しい仕草に胸が締めつけられた。
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